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Viaggio mosaico

〜モザイクをめぐる旅〜

キプロスの旅 パフォス考古学遺跡:ディオニソスの館 part 3

ディオニソスの館 「ディオニソスの凱旋」

おびただしい量のモザイクの絨毯がのこる邸宅にはいると、興奮のあまり夢中になって、ひたすら前のめりに写真を撮るのですが、あとになって、はて?このモザイクはいったいどの部屋のどの部分にあったんだろう、と思い出せないことがよくあります。

このディオニソスの館も例外でなく、写真のように過剰なまでの幾何学模様の連続のなかに小鳥や草花が描かれた細かな縁模様があり、さらには中心に葡萄の唐草あり、、、
と盛りたくさんすぎて私の焦点があわなくなり、しまいにはわけのわからない写真ばかりとって肝心なものが抜けてたりするんです(反省)

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これからご紹介する『ディオニソスの凱旋』のモザイクもあれ?どこにあったっけ?と思い出してみると。。。
そう、さながら『ドアマット』のように部屋の入り口部分に描かれているではないですか。
保存状態がいいのか悪いのかよくわからない、全体的にうすぼやけた色なんでわかりにくいかもしれません。

そう、この部屋は確かに『葡萄』『ディオニソス』をテーマにしたこの館のメインといってもいい大きな部屋(11,5x8,5m)で『タブリヌム:ダイニングルーム』として使用されていたところです。

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インドを征服して凱旋するディオニソスは、持ちかえった『(のちにディオニソスのお供のシンボルとなる)』に引かせた二輪の馬車に座っています。
後ろにいる侍者のサテュロス、右手で葡萄酒が入っていたとおもわれる革袋を引きずり、左手で青いガラスで鮮やかに描かれたクラテール(おそらく葡萄酒がはいった大きなかかめ)を持ちながら、よく見ると左足(半獣ではないですが)で、器用にもディオニソスが乗っている二輪車を押しているではないですか!
ご主人様が乗っている 乗り物 片足でちょいちょい、と押す
ちょっと『ゆる〜い』感じの描写が和みます。 笑

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このドアマット、横長でかなり大きくて、全体の写真を撮り忘れ、全体図がなくてすみません。
こちらの写真は4人の人物が描かれていて、ディオニソスのあとに続いて凱旋しています。
右から 皆さんおなじみのパン(半獣半人の牧神)。
その隣のあきらかに肌の色が黒く描かれている裸の人物はインドからつれて帰った奴隷とおもわれます。
パンの踊り出しそうな足と嬉しそうな表情に比べて、後ろ手につながれた奴隷の人、顔色悪くて可哀想。
奴隷の後ろに続くのは Bacchanteとよばれる侍者たち。

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幾何学模様、唐草、、、
この豪華な装飾、どこに焦点をあててみても『濃い』のでなかなか視点をさだめることができないまま圧倒されます。
ところどころ損傷している部分もあり、鮮明ではないけれど、非常に細かいピースのテッセラで丁寧に描かれています。
葡萄の木の蔦がのびのびと描かれ、その中で、葡萄の収穫をする人、天使、鳥、動物などなど盛り沢山。

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アカンサスとおもわれる植物の唐草の中に鳥や果物や花々が描かれるこのパターンも人気の模様。私も大好きです。
遠くからしか写真がとれなかったのが残念。

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しかしまぁ、本当に、よく作ったものだと思います。
これだけの量の石を手作業で割り、デザインを構成していくのは並大抵の作業量ではないことですよね。

コの字型に並べられた寝椅子の上で葡萄酒を飲みながら、食事を共にし、ディオニソスや葡萄にまつわるモザイクを眺めていたなんて!
なんとも優雅でうらやましい限りですね!
床の装飾がこれですから、食卓はさぞかし華やかだったにちがいありません。

想像していたら、なんだかワインが飲みたくなってきてしまいました。

つづく

キプロスの旅 パフォス考古学遺跡:ディオニソスの館 part 2

ディオニソスの館 四季のモザイク

さてさて、ここパフォス、ディオニソスの館は、館のシンボルにもなっている『ディオニソスをテーマにしたモザイク』にたどり着く前に、興奮で目がちらちらするほど、見所いっぱいなのです。
次にご紹介するのは3番目の部屋に描かれた『四季のモザイク』です。
こちらも発掘された当初、保存状態はよくなく必ずしもオリジナルに忠実な修復がされていない箇所もあるそうです。

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全体図はこのような感じで、「四季」のシンボルとなる人物像が4隅に。
中心の人物のシンボルについては不明だそうですが、『Aion:エイオン』『年』を表すシンボルではないかともいわれています。

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ヤギ

この中心の人物の上部に描かれている「草をついばむヤギさん」の姿
とっても可愛かったのですが、通路からカメラをむけても遠くていい写真がとれませんでした。
(なのでガイドブックの写真をおかりしました)
よくみると ヤギさんが食べてる草木の幹には 鳥がさえずり、牧神パンがもっている笛(syrinxシリンクス)がぶら下がっているではないですか。
余談ですがこのシリンクス、牧神パンが追い求めた乙女で、葦になってしまい、パンはこの葦で笛をつくったといわれています。

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こちらは『秋』をあらわす人物
頭には秋のシンボル葉っぱや木の芽の王冠をかぶり、手には収穫用の鎌をもっています。

『四季』を表す人物像はそれぞれの季節を表すものと一緒に描かれているのですが、単に季節だけでなく、人間の一生の中の「四季」をも表している、人物の描写にも注目です。

春、夏、秋、冬
花とともに描かれた「春」の人物は、花々と共に若々しい乙女の姿、
夏は麦と鎌をシンボルに若々しい青年の姿
人生の終盤、「冬」に描かれる人物は「年老いた老人」
というかんじに、人間の人生の四季にもなぞらえているのです。
豊かな「実りの秋」のシンボルはさながら中年期の人物、とはいえ若々しく描かれています。

左下の『冬』の人物はひげの生えた老人
背後に変な「イカ?」みたいなものと一緒に描かれていますが、(イカのわけないですがイカにしかみえない 笑)
解説を読むと、アンフォラのような瓶から水が流れているそうです。
「水」にまつわるシンボルが描かれているみたいです。

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この四季の部屋、もうひとつの注目ポイントは入り口と出口に描かれた言葉、
Tabulae ansatae タブラエ アンサタエと読むのでしょうか(ラテン語?)
四角い枠と三角形で構成された、キャンディのようなデザインのなかに文字がかかれています。

部屋の片方は『XAIPEI』 welcome とか rejoice、歓迎や喜び
もう片方には『KAI CY』 you too:あなたにも
の意味を表す言葉が描かれています。

こんな風に客人をもてなす言葉が描かれていると、何世紀もの時を越えて極東の日本からこの館を訪れた私に語りかけているようで、館の主に親近感がわきますね。

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この館の主人のように
「XAIPEIという文字を玄関の床にいれてみたいなぁ」
なんていう生徒さんが現れそうな気がします。笑

つづく

キプロスの旅 パフォス考古学遺跡:ディオニソスの館 part 1

年末年始に訪れた キプロスの旅
やるやるといいいながら、随分と時間が経ってしまいましたが、今回は私、楢崎がレポートいたします。

ディオニソスの館 ナルキッソスのモザイク

この旅の第一の目的はココ、モザイクの宝庫の遺跡:パフォス考古学遺跡を訪れることでした。
今回はツアーでの参加だったので、制限時間内に思う存分見れるか、ハラハラドキドキ

興奮をおさえながら、遺跡の入り口へ。
遺跡は港のそばにあるのでランチもそのそばのシーフードレストラン、とっても美味しかったです!

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傘を持っているのは、ガイドのクリスティーナさん。
私が存分にパフォスを満喫したいという、わがままなリクエストにも応じてくださいました!

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遺跡の中は思っていた以上に広いんです。
この地図をみると、目的のモザイクの館はおもに4つ代表的なものが点在しています。
それぞれの館の名前は、その館で発見されたメインのモザイクのギリシア神話の登場人物にちなんでいます。

ディオニソスの館
テセウスの館
エイオンの館
オルフェウスの館
高まる期待!!!!いったいぜんたい全部こころゆくまで見れるんだろうか。。。。

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まず向かったのがおそらく一番大きいと思われるディオニソスの館
モザイク三昧の館です。建物は屋根で覆われていてじっくりとみることができます。

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入り口をはいってすぐのところにあるのが、モザイクの標本のようなもの。
モザイクを構成するテッセラの大きさや素材などのサンプルがおかれていました。

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こちらも入り口はいってすぐのことろに、おそらくはモザイクの歴史を伝える上でも重要な『小石モザイク』が第一の部屋にありました。
小石モザイクは、小さな立方体からなるテッセラモザイクがつくられる以前から床モザイクに用いられてきました。
この白黒の石で描かれた小石モザイクも紀元前4世紀後半から紀元前3世紀のものでとても古いものです。

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ここディオニソスの館ですが、かのディオニソスにまつわるモザイクだけがあるのではなく、ギリシア神話に登場してくる様々な人物のモザイクの部屋があります。
こちらは、2番目の部屋に展示されている『ナルキッソス(ナルシス)のモザイク』です。
『ナルシスト』という言葉のもとにもなった、水面に映る自分自身の顔に恋に落ち、そのまま水におちて死んでしまういうお話有名ですよね。
よ〜くよ〜〜〜〜くみると、このモザイクにもまるで心霊写真?のように水面に映ったナルキッソス、描かれているんです。(ふふふ、作り手の気持ちになるとおもうんですけど、制作者はけっこう苦労したと思います。この水面に映る方の顔をつくるとき)

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エンブレマと呼ばれる中心部分のナルキッソスのモチーフの周りは白黒のモノトーンではありますが、とても素敵なデザインの幾何学模様のモザイクでうめられていました。
よ〜くみるとなかなか凝っているんです。シンプルだけどインパクトもあるこのデザイン、私好みでした。

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肝心のこのディオニソスシリーズのモザイクにたどり着くまで、まだまだ見所いっぱいの館です。
少しづつご紹介していきますね。

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