
Verrerie de Trinquetaille のモザイク群 県立古代アルル博物館 フランス
前回ご紹介したローヌ川右岸の一画にかつてガラス工場(Verrerie de Trinquetaille)があった場所があります。
そこから1世紀〜3世紀ごろの大規模な邸宅跡が見つかりました。貴重な発掘品が多く、今でも現在進行形で発掘、研究が進められています。
今回ご紹介するモザイクはすべてこのエリアから見つかったものです。
冒頭のモザイクは邸宅の大きなトリクリニウムを飾っていました。県立古代アルル博物館の目玉の1つです。
同じエリアからはメデューサや幾何学模様などのこちらのものも出てきてます。
同じ邸宅内でしょうか? どれだけの床をモザイクで飾っていたのでしょう!

壁はポンペイ第2様式に酷似したフレスコ画で覆われていたようです。ガロ・ローマでこのスタイルは希少だとか。
イタリアの方から職人を呼び寄せて作っていたのかもしれません。
ここの主人は相当お金持ちの趣味人だったのかも?

冒頭のモザイクに戻りましょう。
こちらは2世紀末ごろのものとされています。
中心部にいるのは時を司る神アイオーンです。右手にゾディアック(黄道十二宮)を左手には笏を持って、金の玉座に座っています。
その周りを囲むようにいるのはヒッポカンポスにのるネレイドと思うのですが、ヒッポカンポス(海馬)なのに顔が牛っぽくてこれは別の生き物なのでしょうか? うーむ。

こちらは正真正銘、馬の顔のヒッポカンポスですが乗っている人は男性です。
順当にいけばポセイドンなのですが、馬車じゃなく直乗りっぽいし人相もイメージとずいぶんと違うような、、、
作り手がアレンジしたとか?

そして隅っこには可愛らしい小人さんたち。他は大胆ヌードなのにチラ見せのこの子、却って目についてしまいます。

そしてアイオーンのモザイクと反対向きになっているもう一つのモザイクは酩酊のディオニュソスです。
縦に撮った写真を回転させたものなので見辛くてすみません。

ディオニュソスが取り巻きを従えて、宴会場へと誘っているところのようです。手にもワイン壺のようなものを持ってますし、誘った先にもおそらくワインで満たされてるであろう大きな器があります。
この部屋に呼ばれた古代の客人たちはこのモザイクを見ながら、さあこれからたっぷりと飲みましょう!と主人に促されていたのでしょう。
楽しそうな宴が始まりそう、、、私なら期待で胸がワクワクします!
そんな華やかで楽しい場面を連想したくなる作品です。
年の瀬が近づき、私たちもお酒を口にする機会が増える時期になりました。
宴会は本当に楽しいですけど、ディオニュソスの誘惑にはご用心ご用心!

オルフェウスのモザイクほか 県立古代アルル博物館 フランス
南仏のアルルです!
アルルで思いつくのはまずはゴッホですよね? ゆかりの地を巡り歩くのも楽しいです。

古代ローマ遺跡もいろいろあります。

でもなんだかんだで結局一番楽しんだのは今回ご紹介の県立古代アルル博物館でした。
私が訪れた2013年当時に出来たばかりのとってもモダンな建物の博物館。
展示品が厳選されているので空間もゆったり、全部見なきゃ〜!なんてプレッシャーもなく気持ちもゆったりで見て回れます。
見応えのある彫像や精巧なレリーフのある石棺など展示品の質もなかなかのもの。

最古と言われる(?)カエサルの像
しかもお勉強って感じではなく楽しんで見れるんです。
博物館でおきまりの古代建築の再現模型もここでは一味違う。
これはアルルの円形闘技場の模型ですが、遊び心がなんとも素敵。可愛くないですか?
アミューズメント施設にいるみたいです。

でも一番私たちにとって大切なのはモザイクですよね?
ご安心下さい。こんな感じで満足のいく質と量です。

厳選しているのか点数は多くないですがひとつひとつが見応えのあるものばかり。
私としては1回で紹介してしまうにはもったいない量です。
これら南仏の各地から寄せ集めたわけではないんです。
古代アルルの町からまとまって発掘されたというからびっくりです。

こちら4世紀頃のローマ時代のアルルです。ローヌ川左岸(南側)は公共の施設が集積してるのに対して、川を渡った右岸には住宅地があったようです。このエリアの邸宅から見つかったモザイクたちなのです。
まず始めに1900年にカマルグ通りの近くの邸宅跡から「エウローペのモザイク」が見つかりました。
ギリシア神話の挿絵にそのまま使えそうな、綺麗にまとまった作品です。

エウローペのモザイク
白い牡牛の目つきがなんとも言えないです。ゼウスが化けてエウローペーをさらってるところですが「してやったり」とばかりに満足げにほくそ笑んでいるように見えます。
表題のモザイクは同じく現在のカマルグ通りの近く、エウローペーのモザイクとは別の邸宅跡から出てきました。クビクルム(cubiculum)と呼ばれる寝室(または私室)の床を飾ってたようです。1934年の出土で3世紀後半〜4世紀頃のものとされています。
隣にはこんな幾何学模様のモザイクがあったようです。

吟遊詩人のオルフェウスは竪琴の名手です。その腕はアポロン直伝だとか。彼が竪琴を弾くと森の動物や鳥たち、草花までもがうっとりと聞き惚れるほどの超絶技巧の持ち主です。
モザイクはそんな牧歌的な様子を表してます。

確かに後ろの木、踊っているかのようなしなり方です。ちゃんと聴いているみたいですね。
まだまだ紹介していないモザイクがたくさんありますが、行ってからのお楽しみも取っておくことにしましょう。
とは言えあと一つぐらいはお見せしようかな?
ということでこの続きは次回に続きますのでお楽しみに!