バチカンモザイク工房にやどる神の手たち(寄稿)
近藤さんのレポートに続きまして、私も昔の写真を、そしてあの時の興奮を思い出しました!
2010年(もうそんなに経っていたとはびっくり!)バチカンモザイク工房の見学に行かせていただきました。
工房の中は静謐な空気に満たされていて、数人のモザイク職人の方達が
黙々とそれぞれの作品の作業をされていました。
職人さんの中には、美術学校を出た聖職者の方もいらっしゃって、なるほど
この醸し出す空気感はそんな作り手の雰囲気も影響しているかもしれません。
いえいえ、この工房の雰囲気そのものが『神』の代理人そのもの。
本当に素敵な空間でした。
受け継がれる技術:『モザイコ・フィラート』
こちらで制作される作品の多くは、モザイクでありながらまるで絵画そのもののような細かいピースのモザイク。
素材となるのは『フィラート』というイタリア語で『フィロ:糸』のように細く引っ張ったガラスの断面を
ひとつひとつのピースとして制作します。
細かな筆のタッチから、複雑に混ぜあわせられた絵の具の色まで、糸のように細かいガラスで制作していく、
気の遠くなるような作業です。
職人達は、自ら、制作するモザイクの色彩に合わせて素材となる『フィラート』をつくります。
絵の具の混ぜるように、ガラスを混ぜ合わせ、バーナーで溶かして、熱いうちに引っ張るという作業。
これも実演してみせていただきましたが・・・う〜ンなかなか難しそう。
いい素材となる色、そしてのばしたときに自らが欲する美しい色の断面を作るのも職人技です。
興奮のあまり、写真がボケてますが、制作風景です。
小さなセクションごとに、粘土のような生地(こちらもバチカンに古くから伝わる伝統のものです)をのせ、
その上に細かなピースで絵を描いていきます。
腕のいい職人とは?
やはり 色彩感覚が優れた人 とのことでした。
これだけの複雑な色彩の絵画を再現することができるのは、どれだけの色を見分ける力があるか、
も影響しているとおもいました。
『受け継がれる 素材・色』
工房の中で圧倒されたのは、数百年の歴史の中で育まれ、大切に保管されてきた素材の膨大な量、
そしてもう現在では再現不可能といわれている『色彩』が今もここで生かされているということでした。
こちらは、立ち入り禁止のストックエリア。
バチカンの紋章が刻印された、アンティークのズマルトガラスなども見せていただきました。
こうした伝統を守る『技術』をもった職人達と『歴史を彩ってきた素材』を保存してあることで、
今もそしてこれからもバチカンのモザイクが輝きを放ち続けることができるんだろうな、
と「胸がいっぱい」になったひとときでした。
Edited by MihokoNarasaki
今回は楢崎先生より玉稿をいただきました。
フィラート(そうそう!そう呼んでました)のくだり、読みながらそうだった!と何度も頷いちゃいました。
混ざり具合を均質にしたりマダラにしたり、絵の具の質感を再現する様はすごかった、、、
そんなことを思い出しました。