ぶどうの木
サンタ・コンスタンツァ廟のモザイク ローマ イタリア
先生がキプロスの旅を続けているので、私は久しぶりにローマに回帰しようかなー、と昔の写真を漁っていたらとってもキニナル作品を見つけてしまいました。
なので今回の記事はこれにしましょう!
だってこのモチーフ、デジャブ感ハンパないです。
モザイクがあるのが床じゃなく天井で、色合いもちょっと違う感じですが、ぶどうの唐草模様に天使がいたり小鳥がいたり、、、
そう!前回先生がディオニソスの館で紹介していた説明によく似ていませんか?
ここはローマの北東部ノメンターナ通り沿いにあるサンタ・コンスタンツァ廟です。
この廟の主コンスタンツァ(コンスタンティーナ)は最初のキリスト教皇帝コンスタンティヌス大帝の娘です。彼女は敬虔なキリスト教徒で354年に亡くなりました。そしてこの廟が作られたのは350年ごろと言われています。
つまりここはキリストの信者が信者のために建てた霊廟のはずです。でも、、、
キリスト教が公認されて間もない時期って装飾に試行錯誤が見え隠れします。ローマ的なものをそのまま採用したり、意味を変えて転用したり。そういうの面白いなーと思います。
建物の中は訪れる人も少なく、静謐という言葉がぴったりの空間です。
中央にドームがありその周りを回廊がぐるりと取り囲んでいます。この回廊のヴォールト状の天井に目的のモザイクがあります。
こちら光源も少なくまたコインでつく照明もあまり明るくないため全般的にピンボケの写真が多いです。見づらくてすみません。
地色の白さが新鮮に感じますし深い紺色とのコントラストが印象的です。ぶっちゃけると古代ローマの床モザイクがそのまま天井に使われてる感じ? よく見ると、ところどころに金色のテッセラが埋め込んであって、お金がかかってるなーとも思ったり。そりゃ皇帝の娘の廟ですものね。
↑ピンボケなのでサムネイルで失礼します。(クリックしたら拡大して見られます)
この辺り金色のテッセラが多く使われています。
様々な模様の中に、水盤の水を飲む鳩の模様があります。ここではまだ群像のなかに紛れてますがラヴェンナでは代表的なモチーフの一つまで格上げされてました。
鳩は聖なる水を運んでくるし、キリスト教的に使えそう! なんて後々の時代に偉い人がチョイスしたのでしょうか?
最初のものと同じようなものがもう一つありました。女性の姿がこちらのほうがスマートです。
真ん中のあたりに大きく描かれたこの女性の胸像はコンスタンツァだそうです。
ということは数ある中でこのモチーフがメインなのでしょうね。
ぶどうといえばモザイクではないのですが気になる品がもう一つ。
コンスタンツァの石棺。廟に置かれているのは複製で(1枚目)オリジナルはヴァチカン美術館にあります(2枚目)。
浮彫にはアカンサスとぶどうの蔓でできた輪の中に天使のような姿の少年がぶどうを収穫したりぶどう酒を作ったりしています。
当時の司教たちはぶどうを収穫するシーンやぶどうの木というモチーフがキリストの教えに使えると思ったんでしょうね。
聖餐ではワインを用いてますから、ぶどうは無関係ではないのは確かです。
また聖書のヨハネ記15:1〜5ではキリスト自身が「わたしはまことのぶどうの木」であると言い、弟子たちを実り多き枝に例えています。
生い茂るブドウの蔓や枝でキリスト教の発展を願っていたのかもしれません。
とは言ってもディオニソス的なものも見逃しませんよ。
一見幾何学模様に見えるこちら、イルカがたくさんいます。ディオニソスを騙そうとした海賊の軍団の成れの果てです。
廟にはヴォールト部分の他に2箇所のアプスにモザイクが残っています。
こちらのモザイクはトラディツィオ・レギス(律法の授与)の場面を表したものなのだそうです。
キリストがペテロに巻物を与え、それをもう一人の使徒パウロが賞賛してるところで、巻き物には「主は平和を与える」と書かれています。
4世紀末ごろのもので現存するローマの教会モザイクの中でも最古だそうです。
おひげのないキリスト様がここにもいました。初期のキリスト様は若々しく麗しい姿なのがいいです。
こちらのモザイクは神がモーセに十戒を授ける場面と説明されているものと、キリストがペテロに天国の鍵を渡す場面と説明されているものとあります。ウィキではイタリア語、英語共に後者の説をとってました。
4世紀作の物そのままなら球体に座ってらっしゃるのは神様でしょうけど(お髭が生えているので)後世に手が加わったりしてるとキリストかもってところでしょうか? 時期の説明もいろいろでなんとも言えません。
ペテロにお髭がないのも珍しいです。
こちら、テルミニ駅の東マルサーラ通りを北に行ったイタリア財務省前のバス停から行けます。ノメンターナ通りに入る前の城壁の門はミケランジェロ設計のピア門ですので、そちらもお見逃しなく。